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 モンゴルの昔話 

「スーホーの白い馬 」

 小学校2年生の国語の教科書で取り上げられている「スーホーの白い馬」。原作はモンゴルの昔話です。
ある夜、スーホーという少年が寝ていると、ゲルの外から怪我をした馬の苦しそうな声が聞こえてきました。少年は手当をしてやり、数日後、馬は元気になります。そしてそれ以来、少年と白い馬はとても仲良く暮らすのですが、ある日ハ一ンが現われて「競馬をやろう。そして勝った者を自分の娘のむこにしてやろう」というのです。スーホーはこのレースに参加し、見事に優勝します。ところが、ハ一ンはこの貧しい少年と自分の娘を結婚させるのはいやだと思い、少年から馬を取り上げたうえ、追っぱらってしまいました。少年は毎日毎日馬のことを思い、案じます。
 そんなある晩、ゲルの外で馬の声が聞こえました。少年が飛び出ると、ハ一ンの家来に追われて傷だらけになった白い馬がいたのです。「わたしは死んでしまいますが、ずっとあなたのそばにいられるように、わたしの骨や毛を便って楽器を作ってください。」そう言い残して馬は死にます。少年は馬の遺言通りに楽器を作り、その楽器が今の馬頭琴だというお話です。
 ベトナム戦争時、モンゴルはベトナムに馬を数百頭送りました。そのなかの一頭がベトナムで行方不明になりましたが、数年後、持ち主のところに疲れ切って帰って来て、そのまま力尽きたというニュースがありました。
 モンゴルの人々と馬との関係は、単なる家畜とその飼い主ではなく、共に生きる仲間であるということがわかっていただけるでしょう。


「小さなラマ僧の妖怪退治 」

 その昔、有名なラマ寺で妖怪さわぎがおこったときの話です。
 そのお寺は二階建てで、たいそう広い広間がありました。
 お寺に住んでいるラマ僧たちは毎晩、明かりをともすのですが、ある晩、ラマ僧が明かりをつけようとすると、どこからすきま風が吹き込んだものか、フッと明かりが消えてしまいました。
 驚いて、もう一度明かりを用意してつけようとしました。すると、二階にあがってくる階段のところから、「トン、トン」と、足音がします。
 「誰だ?」とさけんでも、返事はありません。ただ、「トン、トン、トン」という足音がするだけです。
 明かりをつけようとしたラマ僧は、近づいてくる足音におびえ、「助けてくれ〜、妖怪だ〜!」と大きな声をあげました。
 その声を聞きつけてたくさんのラマ僧がかけつけてきました。 どうしたのかと聞かれたラマ僧は、きまりが悪いので、こんなでまかせを言いました。「明かりをともそうとしたら、一階から大きな牙をむきだしにした怪物がやってきて、血のような大口を開けて私を食べようとしたんだ」集まったラマ僧たちは、これを聞くと門をかためて悪い妖怪を追い払うお経を読みはじめました。
 大きな声でお経を読み終えると、ラマ僧たちは妖怪は行ってしまったに違いないと考えて、また明かりをつけさせようと、二階に人をやることにしました。しかし、こわがって、「お前が行け」、「お前が行け」と言い合うばかりで、誰一人として二階に行こうとしません。
 ようやく明かりをつけに二階に行くラマ僧が決まり、二階に向かうと、上の方から「トン、トン、トン」という足音がします。びっくりぎょうてんしたラマ僧は、たちまち後もどりです。
 このときから、このラマ寺に明かりをともしに登るラマ僧は誰もいなくなり、夜になっても明かりがつかない日々が続きました。
 ところで、このお寺には、みんなの食事のしたくをしている小坊主(小さなラマ僧)が住んでいました。お経の一つさえろくに読むことができませんが、肝だけはすわっていました。
 小坊主が妖怪退治をしたいと申し出ると、みなは小坊主にそれはたくさんのお供えものを食べさせて、夜になったら二階に行くように手はずを整えました。
 夜になると、小坊主はたいまつを持って二階にあがりました。小坊主は、まず明かりをつけて、それから、祭られている仏像の後ろに隠れました。
 しばらくしても何もおきません。さらにしばらくすると、ふいに、階段の下から「トン、トン、トン」という音が二階に近づいてきました。
 小坊主は身を硬くして、仏像の裏から、階段のほうに、じっと目をこらしました。「トン、トン、トン」という音はますます近づいてきます。小坊主は、目をこらし、目をこらし、ついに見定めました。
 それは、一匹のたいそう大きな白い油ネズミが二階にあがってくる音だったのです。毎日明かりの油を舐めにきたため、その尾には泥がこびりつき、拳骨ほどの大きな泥だんごがついていました。
 その泥だんごが階段にぶつかるたびに、「トン、トン」という音がしていたのです。
 小坊主はしっかりと見極めると、仏像の後ろから踊り出て、油ネズミの頭めがけて、ガツンと一発、火の消えたたいまつの棒でなぐりかかりました。
 油ネズミはひとたまりもなく、頭を割られてしまいました。
 小坊主は尾についていた泥だんごをくだきさって、「千年生きた油ネズミの妖怪を退治した」と和尚さんに報告しました。
 和尚さんは手を合わせて念仏をとなえました。そして小坊主を、お寺を守るえらいラマに出世させました。


「キツネとウサギ」

 あるところに二羽の子ウサギが住んでいました。
 夏のある日、ウサギが草を食べようとしていると、草の中に、動物の肉の大きなかたまりがありました。脂身がたっぷりある、いい肉です。
 子ウサギたちは良い心を持っていたので、落とし主を探して、ぴょんぴょんとびはねていきました。
 すると、黄色い毛皮の大きなしっぽをしたキツネに会いました。
 キツネは二羽の子ウサギにいいました。「大きな肉をひろうなんて心がけがいいね」
 二羽の子ウサギは持ち主をさがしているという話をしました。ずるがしこいキツネはおいしそうな肉を見て、唾がとまりません。「もう夕方で空は暗いよ。これはぼくら三人で分けようよ」
 子ウサギたちは、お年寄りたちから、『自分の分を守った暮らしからはずれるな』といつも教わっていたので、キツネの言葉にのりません。肉を落とした人を探すんだといって、森に入ろうとしました。
 「森の中には誰もいなかったよ。いいかい、外で拾ったものは食べるのが当然なんだ。
 これは心がけがいいきみたちへの天からの贈り物だ。きみたち二人で肉を分けるために、天の神様がおれをつかわしたんだよ!」
 キツネが肉をまきあげようといろいろいったので、とうとうウサギも肉をわけることにしました。
 キツネは唾をだらだらたらしながら、刀をとりだしてみがきました。
 そして、肉を二つに切り分けました。「年をとったせいで、目が悪くなった。よく見えないものだから、
こっちが大きかった」
 キツネはそういって、大きなほうのかたまりを一口かじりました。「こんどはこっちが大きいかな」
 そういって、さらに反対のかたまりも一口かじります。
 さらに、キツネは子ウサギたちにいいました。「大きなほうをどっちがとるか、かけっこで決めなさい」
 子ウサギたちは、それを聞くと身をひるがえして森のほうへとはしっていきました。
 ウサギが行ってしまうと、キツネは大きな口を開けて肉を全部食べようとしました。
 そのとき、森へとはしっていった子ウサギたちが、遠くから叫びました。「キツネさん、森の奥に人間がいるよ、逃げた方がいいよ!」
 キツネはウサギの言葉を信じて、あわてて口の中の肉をのみこみました。
 「キツネさん、どっちに逃げるんだ、そっちには人間がいるよ!」
 子ウサギたちはさけんで、キツネを狩人のわながある場所へと走らせました。
 キツネは肉を放り出して、あっちへうろうろ、こっちへうろうろと逃げまどい、とうとう狩人のわなにつかまってしまいました。

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